カラ=西アフリカ農村自立協力会の会報 「からばす」16号から

カラとノーベル平和賞

壽賀 一仁(日本国際ボランティアセンター)

 早いもので、昨年末のカラ活動評価でトウグニ共同体を訪問してから、まもなく1年になる。この間、私はブルキナファソやニジェール、またジンバブウェ、インド、カンボジアといった国々の地域開発プロジェクトに出張し、その度にカラの活動を思い出していた。

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 JICA、国際NGO、ローカルNGOと実施主体はさまざまだが、訪問した各地の地域開発プロジェクトと比べた時、カラの活動は大きく二つの点で特徴的だ。一点目は、まず何よりもスタッフの質とチームワークのレベルが非常に高いことである。旧態依然のシステムに慣れきった行政官の能力向上に予算と時間の多くを取られているプロジェクトや、能力不足あるいは慈善心に満ちたスタッフに振り回されているプロジェクトに対して、カラの活動は経験を積み重ねてきたスタッフの高い能力とコミットメント(献身)そしてチームワークに支えられている。これはトウグニ共同体に住み込むスマイラ、ケイタ、アワはもとより、バマコ事務所責任者のジャワラ氏やドライバーのセイドゥにも共通していて、他団体には羨ましい限りである。もちろん私の所属NGOもその例外ではない。

 2点目は、活動の幅の広さとその広げ方だ。カラの活動はマラリアや寄生虫対策の薬剤投与と診療所設置の医療保健分野に始まり、識字教室や小学校設置の教育分野、植林や改良カマド普及の環境分野、そして野菜園やマイクロクレジットを通じた収入向上分野にまで幅広くひろがり、村人の暮らし全般に関わっている。その広がり自体、対象分野を特化することが多い他のプロジェクトに比べて特徴的だが、さらにその活動や研修が基本的にすべて村の中でおこなわれ、現地スタッフによってしっかりフォローアップされていることが効果を一層高めている。

 いきなり話が飛ぶが、上述したカラの活動の広げ方が実は近年のノーベル平和賞の流れとぴったり符合していることを皆さんはご存知だろうか。つい先日、今年のノーベル平和賞が農村の貧困層(特に女性)の収入向上と生活改善に多大な貢献をした有名なバングラディシュのグラミン銀行とその創設者ユヌス博士に決定したが、1999年の国境なき医師団(医療保健分野)、2004年のワンガリ・マータイさん(環境分野)に続くグラミン銀行(収入向上分野)の受賞は、まさにカラの活動の軌跡そのものだ。つまり、「からばす」の読者の皆さんはカラと一緒に世界の平和づくりの最前線を歩んでいることになる。

 こうしたカラの活動だが、近年注目を集めている5つの資本(自然・人間・インフラ・金融・社会)の強化という開発アプローチから見ると、人々の協力関係や規範、組織化といった社会資本だけはまだ直接的な活動対象になっていない。昨年の評価でも提言されたが、カラの活動が村の既存の社会組織や新しい協力関係の形成・強化にプラスの影響を与えていけるような配慮と適切なモニタリングが今後期待されている。そうすれば、カラは次のノーベル平和賞の先を行くことになるかもしれないと、私は真剣に思っている。

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